2026年3月26日(現地時間)、AppleがMac Proの生産終了を正式に発表しました。Apple公式サイトからMac Proの製品ページが完全に削除されており、Appleは「今後Mac Proの新モデルを提供する予定はない」と明言しています。
プロフェッショナル向けデスクトップMacとして25年以上にわたり愛されてきたMac Proが、ついにその歴史に幕を閉じることになりました。
Mac Pro生産終了の経緯
Mac Proの生産終了は、ある意味では予想されていた展開です。現行モデルは2023年6月にM2 Ultraチップを搭載してリリースされましたが、その後約3年間にわたってアップデートが行われていませんでした。
その間にAppleは2025年にM3 Ultraチップを発表し、Mac Studioに搭載。Mac Proには最新チップが搭載されることなく、$6,999(約107万円)という高額な価格設定のまま放置される状態が続いていました。
9to5Macの報道によれば、Appleは「最新のチップセットなしにMac Proを販売し続けることは、Macユーザーにとって不利益になる」と判断したとのこと。実際、M2 Ultra搭載のMac Proよりも、M3 Ultra搭載のMac Studioの方が性能面で優れている状況でした。
Mac Proの歴史を振り返る
Mac Proの歴史は、2000年代初頭のPower Mac G5にまでさかのぼります。Appleのプロフェッショナル向けデスクトップは、映像制作、音楽制作、科学計算など、最高レベルの処理性能を必要とするクリエイターやプロフェッショナルから絶大な支持を得てきました。
Mac Proの主な変遷
- 2006年:Intel移行に伴い「Mac Pro」ブランドが誕生。タワー型デザインを採用
- 2013年:円筒形の革新的デザイン(通称「ゴミ箱Mac」)を発表。斬新すぎるデザインに賛否両論が巻き起こった
- 2019年:従来のタワー型デザインに回帰。8つのPCIeスロットを搭載し、拡張性を重視した設計で大幅に評価を回復
- 2023年:Apple Silicon(M2 Ultra)に移行。これが最後のアップデートとなった
特に注目すべきは、13年間でわずか3回のメジャーアップデートしか行われなかった点です。Appleにとっても、Mac Proの開発・製造コストと販売台数のバランスが課題だったことがうかがえます。
0のホイールキットも同時廃止
Mac Pro本体と同時に、別売りのホイールキット($699/約10万7,000円)も販売終了となりました。このホイールキットは、Mac Proの底面に取り付けて移動しやすくするためのアクセサリーでしたが、その価格の高さから「Apple製品の中で最も割高なアクセサリー」としてたびたび話題になっていました。
ちなみに、ホイールキット単体の価格$699は、Mac miniの基本モデル($599)よりも高額です。このエピソードは、Mac Proがいかにプレミアムなプロダクトだったかを象徴しています。
Mac Studioが実質的な後継機に
Appleは現在、プロフェッショナル向けデスクトップMacとしてMac Studioを推しています。最新のMac Studioは以下のスペックで構成可能です。
- チップ:M3 Ultra(M4 Ultraは2026年後半に登場予定)
- CPU:最大32コア
- GPU:最大80コア
- メモリ:最大256GB ユニファイドメモリ
- ストレージ:最大16TB SSD
これらのスペックは、多くのプロフェッショナルワークフローにとって十分以上の性能です。Mac Studioはタワー型のMac Proと比べて大幅にコンパクトで、デスクスペースを取りません。
Mac Proとの主な違い
ただし、Mac ProからMac Studioへの移行で失われるものもあります。
- PCIeスロット:Mac Proには8つのPCIeスロットがあり、GPUカードやキャプチャカードなどの拡張が可能だった。Mac Studioには非搭載
- 内部ストレージの拡張性:Mac Proでは内部にSSDを追加できたが、Mac Studioは固定
- ECC メモリ:一部のプロフェッショナル用途で重要なECCメモリのサポートが異なる
これらの拡張性を必要としていたユーザーにとって、Mac Studioは完全な代替とは言えないかもしれません。
Thunderbolt 5クラスタリングで拡張性を補完
興味深いことに、macOS Tahoe 26.2で導入されたRDMA over Thunderbolt 5機能により、複数のMacをクラスタリングしてパフォーマンスをスケーリングすることが可能になりました。
この技術により、1台の超高性能マシンに頼る代わりに、複数のMac Studioを連携させて処理能力を拡張するという新しいアプローチが実現します。Appleがこの機能をMac Pro廃止のタイミングで投入してきたのは、おそらく偶然ではないでしょう。
現在のMacデスクトップラインナップ
Mac Proの廃止により、Appleのデスクトップラインナップは以下の3モデルに整理されました。
| モデル | チップ | 価格(米国) | 想定ユーザー |
|---|---|---|---|
| iMac 24インチ | M4 | $1,299〜 | 一般ユーザー・ビジネス |
| Mac mini | M4 / M4 Pro | $599〜 | コスパ重視・開発者 |
| Mac Studio | M3 Max / M3 Ultra | $1,999〜 | クリエイター・プロフェッショナル |
Appleはこれを「ここ数年で最も強力なMacラインナップ」と表現しており、Mac Proの穴はMac Studioが十分にカバーできるという自信がうかがえます。
まとめ:時代の転換点
Mac Proの廃止は、Appleのプロフェッショナル向け戦略の大きな転換点を意味します。かつてはIntel Xeonプロセッサとdiscrete GPUを搭載し、圧倒的な拡張性を誇ったMac Proですが、Apple Siliconの登場により「1チップで全てをまかなう」時代が到来しました。
Mac Studioのコンパクトなフォームファクターで十分なパフォーマンスが得られる今、巨大なタワー型筐体の存在意義は薄れていたのかもしれません。Thunderbolt 5クラスタリングという新たな拡張手段も登場し、「拡張性=内部スロット」という従来の概念自体が変わりつつあります。
25年以上にわたりプロフェッショナルの創造活動を支えてきたMac Proに感謝しつつ、Apple Siliconが切り開く新しいプロワークフローの未来に期待しましょう。
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